英語を話す演習時間を延ばせば 英会話は上達するか?
Can we assert that English conversation skills are directly proportional to the amount of time spent studying?
Q. オンライン英語学習が登場して以来、オンライン英会話業者は一貫として “英会話の上達度は、話した量に比例します。” と謳い、英語が話せないのは アウトプット(実際に英語で話してみること)に費やす時間が少ないからで、発話時間を増やせば上達する と言いますが、それは本当でしょうか?
A. オンライン英会話業者の主張を 100% 否定することはできませんが、”本質を突くことなく” 拡大解釈をしていると言えます。
まず、学習に関しては、1. “どの教科でも、全く勉強しないより 少しでも学習した方がよい。” の原則があります。 ですので 学習に費やした “時間量” を否定することはできません。
また、2. オンライン業者は 薄利多売であるため、オンライン学習の使用時間を延ばすことで 利益率の改善が見込める。 という背景に基づく “ポジショントーク” の一環とも言えるでしょう。
特に フィリピン人の英会話講師を使用するオンライン英会話業者は “アジアの優等生!フィリピン人の英語力の高さが自慢” などと主張していますが、2022年の学習到達度調査(* PISA)でも 参加 74か国の中でも 最低の学力を記録しています。 ですので、語学学習という 学術分野で、”優等生” と表現するには語弊があると思います。
* PISA(Programme for International Student Assessment の略): OECD (経済協力開発機構) がその加盟国と進める 国際的な学習到達度に関する調査で、3年毎に15歳を対象に行われる学習到達度テストです。。 PISA 2022 で、日本は 数学的リテラシーにおいて81か国中で5位、読解力は3位 のスコアを記録しています。
脳の仕組みから 英語学習と英会話スキルを考える
英語を話す時間を伸ばすだけでは 英語力は延びませんし、むしろ 同じ誤りを何度も繰り返し、強固に形成された 誤り は、関連分野の知識にも影響を及ぼし、粗形態 に陥ってしまいます。 その理由を簡単に説明します。
複雑な知覚学習では、単純な “量質転化” は 生じない(仮説)
会話は コントロールが難しい潜在意識を用い、脳の大脳辺縁系を用いて 会話を進めます。 大脳辺縁系は情動を司る部位であり、”(例) 怖い犬がいる” と 瞬時に動きを変えたりするなど、反射的な行動を指示する “速くて浅い思考” です。 つまり 大脳辺縁系だけを用いて 演習しても、高次の学習や判断をする 前頭前野 を有効活用するための “遅くて深い思考” は働かない。 そして メンタルレキシコンが発達や自発的な構築がなければ、英会話が話せるようにはならないと思います。
また、いくら英語を話す時間を増やしても、ESL のロールプレィばかりでは、学習の成果は限定的なものとなる。 日本人の英語が話せないという 問題の根底には、(a) 音韻ループ の未発達という問題 と (b) 発話の際の 概念化と 形成の段階で 語用論能力まで ワーキングメモリが回らない点にあるのだと思います。 (a) と (b) に主眼を置かない 発話トレーニングにより 英語力に偏りが生じ、言語操作能力の発達の阻害要因として アウトプットに表出しますので、オンライン英会話経験のある学習者の授業を担当する際、講師はその阻害要因を取り除くことこら、ティーチングは始まります。
そして、限りある学習時間を有効に使うためには、語彙スキーマのビルディングとアラインメントを 日課として行うこと。 そして 脳に負荷をかける 新聞記事の和文英訳などを 学習に取り入れ、言語中枢の可動範囲を広げ、より深い表現ができるよう、中期的な方略を組むことが理想的です。