オンライン英会話は 効果があるのか? – 英会話講師の視点
新型コロナウイルス感染症対策もあり、オンライン授業が全国的に展開されるようになりました。
文部科学省は、コロナ渦の中、多くの学校で、臨時休業が長期化する見通しとなった段階で、登校できなくても学びを止めないために、遠隔・オンライン教育を取り入れた家庭学習を推奨。 ポストコロナの現在も、情報通信技術を活用した ICT (Information and Communication Technology) を 教育の現場に浸透させるため、電子黒板や、パソコンやタブレットなどのデジタル器機の導入、インターネットを介した学習支援ツールの活用の促進活動を、積極的に 行なっています。
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もちろん、コロナ渦のような 不測の事態に対抗するという 意味で、ICT は 十二分な役割を果たした と言えます。 確かに、上で提供可能なオンライン授業(小学校~大学だけでなく、習い事も含む)は、学習者と学校に、授業料・運営費のコスト削減や、効率化といったメリットをもたらします。 しかし、そのメリットは 量的(多くの人が安価で受講できる)、距離的(特に 遠隔地に住む人達)なものであって、質的な ものでないということに、人々は 気づき始めたようです。
2023年9月8日の the New York Times では、 “Is Online Learning Effective?” (オンライン学習は 本当に役に立つのか?)という記事を掲載。 その中で、UNESCO のレポートを引用し、コロナ渦の オンライン教育の間 アメリカや ブラジルで、児童たちの 学力が低下した例を掲載し、下記のコメントを引用しています。
“Available evidence strongly indicates that the bright spots of the ed-tech experiences during the pandemic, while important and deserving of attention, were vastly eclipsed by failure,” the UNESCO report said.
UNESCO は コロナ渦に対応するため、オンライン教育を 促進してきましたが、ポストコロナの今、見直しが 必要だと 言います。
オンライン英会話の問題点を再考する
MPE の 英会話講師たちの 一般的な意見は、オンライン英会話は “やらないよりマシ” と言う意見が 大半を占めています。 その理由はについては:
– 講師の質が低い。 一般的に 対面授業を出来るレベルに無い人が、オンライン英会話講師になる。 なぜなら 時給が低い、オンライン講師になる人の実力は 時給に見合った実力である。
– オンライン英会話は、講師だけでなく、生徒の質も低いので、上達しない。
– オンライン英会話は 薄利多売なため、出来るだけ長い時間 受講することを 推奨する点や、すぐ エビングハウスの忘却曲線 を例に出すなど、首をかしげる点が多い。(”忘却のメカニズム” の実験では、無意味記憶の力を測定しているが、英会話学習では、短期記憶(ワーキングメモリ)と、長期記憶(意味記憶、エピソード記憶、手続き記憶)を、場面に応じて駆使するもので あるので、その実験結果を引用するのが 適切であるかが 疑問である。)
などの、意見を聞くことができました。 ただ、講師の中には、アメリカのラップの発音を聞いて、音声学と音韻論の基礎を学んだという者もいる。 情熱と 知的好奇心を 十分に注ぐことができれば、オンライン英会話でも、クラビングを介してでも、きっと英語は 上達するのだと 思います。
ただ、ほぼ 全講師の意見に 共通していたのは “オンライン英会話 では何かが足りない” という意見でした。
オンライン英会話では 脳が十分に作動しない という仮説を持つ
朝日新聞出版のwebサイト “AERAdot.” に 2023年2月、”オンライン会話での脳活動は「ひとりでボーッとしながら何も考えていない」状態と同じという驚きの実験結果” という 記事が掲載されました。 “脳トレ” でも著名な川島隆太先生率いる 東北大学加齢医学研究所 の 榊浩平助教の言葉を引用します。
“実験の結果から、オンラインでは、脳活動が同期していないことがわかりました。驚くべきことに、オンライン会話をしているときの脳は、ひとりでボーッとしながら何も考えていないときと同じ状態だったのです。すなわち、オンライン会話は、脳にとっては正常なコミュニケーションになっていないといえます。”
“しかし、実験の結果を解析してみて愕然としました。まさか、何もしないでボーッとしているときと変わらないとは思いませんでした。オンラインに頼ることが当たり前になりつつある「新しい生活様式」は、私たちが想像しているよりも遥かに危険なものなのかもしれません。”
上記は、教育に携わる人にとって、かなりショッキングな 実験報告であったと 推測します。 ただ、同じような実験は 世界各国で行われ、類似する 臨床実験の結果が 報告されています。
そして、UNESCO はレポートの中で、下記のように 意見を述べています。
“A UNESCO report says schools’ heavy focus on remote online learning during the pandemic worsened educational disparities among students worldwide.” Amira Karaoud/Reuters